松本清張 文藝春秋

清張ミステリーと昭和三十年代

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清張ミステリーと昭和三十年代
【発売:1999年3月】

昭和30年代の高度成長期は、また松本清張ミステリーのピークともいえる時期でもあった。『砂の器』や『点と線』など「社会派」の端緒と捉えられることの多い清張作品であるが、実は本格ミステリーとしてのしっかりとした骨格を持ち、風俗描写にも優れている。本書は社会が大きく変容したこの時代と清張作品とを、「映画館の見える風景」、「愛と性の考古学」、「貞操をめぐる物語」といった章立てで社会学、風俗学的見地から考察していく、新しいタイプの清張論である。
著者は日本近現代文学の研究者であるが、いわゆる文学のみならず流行歌、映画、テレビドラマといった、より身近なメディアを論ずることも多く『望郷歌謡曲考』といった著書もある。大学での講義録が基となったという本書でも、清張作品の社会問題を鋭くえぐる側面ではなく、これまで省みられることの少なかった風俗小説としての側面、特に性とそのモラルを描いた部分を取り上げたあたりに著者ならではの視点がうかがえる。

圧巻なのは、短編『憎悪の依頼』を、当時の雑誌に掲載された、性や貞操にまつわる実際の相談例を取り上げながら分析していくくだりだ。主人公が交際1年におよぶ女性と性交渉を持つには至らなかった理由が、同時代の文化コードと照合され解き明かされる過程には、知的興奮を覚える。巨匠には違いないものの平成以降は過少評価されがちであった清張作品に、新しい読者を呼びこむに違いない力作である。

日本が大きく変貌した高度成長期と松本清張。この両者の出会いで花開いたのが「社会派」と称される新たなジャンルのミステリーだった

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松本清張のプロフィール

小説家。
本名、清張 (きよはる)。1909年12月21日-1992年8月4日。福岡県企救郡板櫃村(現在の北九州市小倉北区)生まれ。
1950年、「西郷札」が『週刊朝日』の「百万人の小説」の三等に入選。
1952年、『三田文学』に「記憶」「或る『小倉日記』伝」を発表。
「或る『小倉日記』伝」は直木賞候補となったが、のちに芥川賞選考委員会に回され、第28回芥川賞を受賞している。
著者は、『点と線』『けものみち』『わるいやつら』『黒革の手帖』『かげろう絵図』『黒い画集』『歪んだ複写』『砂の器』『天保図録』等。全集、短編集、作品集も数多く出版されています。
また、1998年には北九州市立松本清張記念館が開館し、松本清張の書斎や書庫を再現しているそうです。

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