著者が「愉しさを第一に」取り組んだ傑作時代小説。
徳川家斉が大御所として君臨する天保十一年、絢爛たる吹上の桜見の会で奥女中らが注視する中、事件は起こった―。
家斉が寵愛する中臈と背後の黒幕石翁。彼らの追い落としを謀る水野忠邦一派。両者の罠のかけあいを推理手法で描き、権力に群がる矮小な人間の姿を炙りだす。
著者略歴
松本 清張
1909(明治42)年12月、福岡県企救郡板櫃村(現・北九州市)に生れる。53(昭和28)年「或る『小倉日記』伝」で第28回芥川賞を受賞。
56年、それまで勤めていた朝日新聞社広告部を退職し、作家生活に入る。
63年「日本の黒い霧」などの業績により第5回日本ジャーナリスト会議賞受賞。
67年第1回吉川英治文学賞受賞。
70年第18回菊池寛賞、90年朝日賞受賞。
92(平成4)年8月死去。